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イップ・マンの息子も凄い人 [映画ア行]

『イップ・マン 誕生』

ブルース・リーの師と言われる、伝説の詠春拳の使い手イップ・マンの生涯を、ドニー・イェンが演じた『イップ・マン 序章』と『イップ・マン 葉問』を見たのは一昨年の東京国際映画祭だった。
それに端を発して、昨年は次々に主演作が公開となり、日本は時ならぬ「ドニー・イェン祭」の様相を呈したわけだが、彼が演じたイップ・マンのさらに若い時代に焦点を当て、ドニー・イェンからその大役を引き継いだ、当時29才のデニス・トーが演じたのがこの映画。
面長な顔立ちで、歳重ねたらドニー・イェンになっても不自然じゃないね。よく見つけてきたと思うが、その上、デニス・トーは実際に詠春拳や洪家拳などをマスターしていて、18才の時には「世界武術選手権大会」で最年少優勝してるという。技も速いし、型も美しい。

まだ役者としての経験に乏しいデニスをサポートするためか、師匠にユン・ピョウ、そのまた師匠にサモ・ハン・キンポーという豪華そろい踏み。ふたりが同じ画面に収まってるのだけでも感慨深いもんがあるのに、映画の冒頭には、その二人が目隠しをして、相手の気配を読む組手を披露してくれる。
『イップ・マン 葉問』ではドニー・イェンとの派手な立ち回りも見せ、重要な役を演じてたサモ・ハンだが、この映画ではゲスト扱いのような感じで、早々にお役御免に。
つまり病死してしまい、ユン・ピョウ演じる一番弟子ツォンソウが後を継ぐのだ。

映画は6才のイップ・マンが、詠春拳武官に預けられる場面に始まる。義兄イップ・ティンチーも一緒だった。
ティンチーは夜毎、悪夢にうなされた。家の門前に泥だらけでうずくまる自分の姿。ティンチーはイップ・マンの両親が養子にしてたのだ。少女ながらも詠春拳の修行を行うメイワイと3人で、1個のあげパンを分け合ったりしながら、10年の月日が流れた。

ある祭りの晩に、町に出たイップ・マンたち、詠春拳武官の弟子たちは、目の前で男たちから絡まれてる、美しい身なりの女性を助ける。目にも止まらぬ拳と蹴りで、男たちを一蹴したイップ・マンに熱い眼差しを向けたのは、市長の娘ウィンセンだった。その二人の様子を見てメイワイは心穏やかではなかった。
後日ウィンセンはイップ・マンに手紙をしたため、妹に頼んで、詠春拳武官に使いに行ってもらう。メイワイは
「イップ・マンに直接渡したい」と言われ
「今いないから私が預かる」
と半ば強引に手紙を預かり、それはイップ・マンに届くことはなかった。

そんな経緯も知らず、イップ・マンは中国・広東省の詠春拳武官を一時離れ、香港の英国人たちが多く学ぶ、カソリック系の学院に入学する。校内で中国人を「アジアの病人」と罵倒した英国人学生を叩きのめしたことで、イップ・マンは一躍町の中国人の間で有名となる。
薬局の年老いた店主も彼の噂を聞いていた。店を訪れたイップ・マンに
「ひとつお手合わせ願おう」と。
こんな狭い店で、しかも相手は小さな老人とあって、イップ・マンはやんわりと断りを入れるが、老人の所作を見て、ただ者ではないと感じる。
老人はイップ・マンの構えを見抜き
「詠春拳の使い手なら、戦う時は手加減なしと知ってるな?」

老人は狭い空間をものともせず、矢継ぎ早に技を繰り出してくる。イップ・マンも本気になったが、いいようにあしらわれてしまう。イップ・マンはその老人が、実は詠春拳の達人と名を轟かせたリョン・ピックであることを知り、香港滞在の間、新たな師匠として教えを乞うことになる。
リョン・ピックは、詠春拳の技にはない、高い打点の蹴りなど、自らが長い期間を経てアレンジした様々な技を伝授した。
「詠春拳には本家も邪道もない」
それがリョン・ピックの教えだった。

4年後、勉学と技の鍛錬を積み、意気揚々と詠春拳武官に戻ったイップ・マンだったが、師匠のツォンソウは、伝統からはみ出したイップ・マンの詠春拳を認めなかった。イップ・マンは師匠に対し、
「伝統に縛られてばかりでは、錆び付いてしまう」
と意見し、二人は激しく対立。ついに師匠と弟子は勝負をつけることに。
だがイップ・マンは習得した技で師匠を打ち負かすチャンスがありながら躊躇してしまう。

時は1919年、日中戦争勃発の不穏な空気が、ここ広東省にも覆い始めていた。日本の貿易商人・北野は、金と軍部を背景とした圧力で、税関や警察にも影響力を行使してたが、「精武体育会」のリー会長は、その圧力に屈しなかった。
イップ・マンは久々に再会した市長の娘ウィンセンと、身分の違いを超えて恋におち、それを知ったメイワイは、傷心から彼女に好意を寄せてたティンチーとの結婚を決意する。
その結婚式の晩、リー会長が何者かに殺される。その直前に酔ったリー会長とイップ・マンが技を見せ合ってた所を目撃されており、イップ・マンは容疑者にされる。だがイップ・マンは、「精武体育会」の副会長の座に就き、ビジネスも成功させている義兄ティンチーを疑っていた。
ともに詠春拳を磨き育ってきた二人の対決は避けられない運命となっていた。
そしてイップ・マンは、義兄の出生の秘密を知ることになる。

デニス・トーは実際に使い手だから、もちろん技も見事ではあるが、演技者として経験が浅いので、ドニー・イェンが技を繰り出すまでの間合いとか、見栄の切り方とか、「アクション・スター」としての風格と比べられると分が悪い。これは映画の場数を踏んでくしかないからだ。
ドニー・イェンは拳でも蹴りでも、実際以上のインパクトを観客に与える「見せ方」を熟知してるのだ。
この映画でもデニス・トーは数々の格闘場面を演じてるが、「すげえ!」と感嘆するような「はったり」に欠ける。
演技自体も硬いんだが、心根の真っ直ぐな青年像は素直に伝わる。
だが劇中で市長の娘ウィンセンに、
「僕と一緒になってほしい。一生を賭けて君を守るから」
とまで言っときながら、華麗にスルーして最後はメイワンとくっついてる、その節操のなさは女性から問題視されると思うぞ。

義兄ティンチーを演じるルイス・ファンは、俺の世代でいうと『柔道一直線』の桜木健一を思わせるルックスではあるが、それにしてもなセリフが出てくるんで、そこは仰け反ったが。

薬局の店主の老人を演じてるのが、実際のイップ・マンの息子イップ・チュンというのも見もの。
90近いらしいのだが、ピシッと芯の通った所作はさすが。
技の使い手ではあっても、実際に若い達人のデニス・トーと普通に戦わせるのでは説得力に欠ける。そこで薬局の狭い店内に場所を設定し、「狭さ」を巧みに利用して技を繰り出す「地の利」を与えてるのが上手いと思った。

市長の役でジョニー・トー映画の常連ラム・シューも出てるし、周囲を固める顔ぶれがいいのも、最後まで飽きずに見させてくれる要素になってる。
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紅茶花伝大好き

確かに終盤は失速した感じです。最終シーンにメイワイはいなった気がしますよ。私ももう一度観てみます。
by 紅茶花伝大好き (2015-10-25 10:00) 

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